追憶の調べ[後編](オリジナル作品)

128和音着メロ[MA-7]
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着メロ情報 投稿:鳳花 (2011/04)
出典:オリジナル作品
メロコード:205153
投稿者コメント その夜、白は自分で用意した花火セットを手に、すこし冷えた砂の浜であの二人が来るのを待った。

「お待たせ〜」

走ってきたのは律乃。そのすこし後方からは凉音が歩いてくる。

「涼しいねー、っていうかちょっと冷えるねー」

薄着の凉音はそう言った。白は自分のTシャツを貸そうか迷ったが、やめておいた。

「で、花火といえば打ち上げだよな?な!?」

「わー、待っとれ律乃ちゃん」

うっとうしく絡んでくる律乃を軽くあしらって白は、手際よく打ち上げ花火をセッティングする。

「火!」

「落ち着きのないお前に着火はさせん」

と白は自ら打ち上げ花火に火を点ける。

「わあ、ほんとにお花みたい!」

満月を背に開いた花火を見上げる凉音の無邪気な笑顔に吸い込まれそうになりながらも、白は次の花火へ着火する。

「うおおおお!」

よくわからない奇声を発する律乃。その声も、次々と打ち上げられる花火の音にかき消されていった。



「シメは線香花火って、誰が考えたんだろうねぇ」

凉音は誰に問いかけるでもなくつぶやく。三人はそれぞれ一本ずつ最後の線香花火を持ち、微かな灯りを楽しんでいた。
その火種もすこしずつ弱まってきて、

「あ、わたしもう消えちゃう...」

寂しそうに凉音がそう言う。白ははっとして彼女を見やると、凉音の体が透けて見えた。

「凉音っ!」

ぽとり、彼女の火が砂の上に虚しく落ちる。白が顔をあげると、そこにもう凉音の姿は無かった。

「……白、いつまで甘えてんの?」

不意に、座っていた白の頭上から律乃の険しい声が。見上げれば彼は、弱々しい光の線香花火を左手に持ち白を見下ろしていた。その姿も透けて、彼の胸元には綺麗な満月が見える。

「まだ夢に囚われてんの?」

その言葉は白の心をえぐる。そこへ、強い輝きが向けられる。

「律乃...」

律乃の右手には、月光をうけてぎらつくナイフが握られていた。その刃のところどころに赤い痕が見える。それが誰の血によるものか白は知っていた。

「凉音のナイフだよ」

ぱたん、と砂の上にナイフが落ちる。それを握っていた律乃ももう消えていた。

「凉音...」

ナイフを拾い上げ立ち上がる白。彼が握りしめたのは、一年前、凉音が律乃を刺し、そして自殺したナイフである。



あの夏の日も三人で海に来て、三人で花火をして、そして白の前で律乃が凉音に愛を告白した。凉音はしかしその想いを断った。

『わたしが好きなのは、白ちゃんだから』

凉音の思わぬ言葉。そのとき白は耳を疑った。凉音にはそんな気持ちなど無いと思っていたからだ。それは律乃も同じであった。彼はどうしていいかわからず、白に殴りかかってしまった。凉音は泣き出し、白は放心してしまう。不思議と痛みは感じなかった。痛みを感じる余裕もなかった。
しかし、何度も殴っていた律乃の手が不意に止まり、彼は倒れた。我に返った白が見たのは、号泣しながら赤く染まったナイフを握り立ち尽くす凉音。

『...なに、やってんだよ?』

訊ねた白の声は震えていた。その直後、凉音の泣き声が止まる。

『嘘だろ...』

凉音は自らの腹にナイフを突き立てていた。



白は血の滴るナイフを手に立ち尽くす。あれから一年たって、二人が戻ってきてくれたと思っていた。けれどそれはすべて彼の妄想でしかなかった。あの思い出の楽しい部分をリピートしていただけだった。ナイフを持つ反対の手には、三本の線香花火が握られている。うち二本はもう灯りを失い、最後の一本も、今、消えた。

「ううっ...」

同時に涙が溢れてくる。いっそこのまま自分の命も消えてくれればと月に願ったが、叶わない。握ったナイフで自らを貫く勇気もない。

一人しかいない夜の砂浜、ナイフから滴った二人ぶんの血は、冷たい砂に染みて渇いてゆく。



〈完〉


感想があると嬉しいのです♪
基本的に、すべてのコメントにお返しするように心がけております!

曲のモチーフになったお話はこちら↓から作曲から逃げてみたHP
『Innocent lilies』
『Sevens外伝』
『雪中花の愛染』
など掲載中(*^o^*)
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鳳花の部屋!
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いただきました!が

くそっ
なんて鬱エンドなんだ…

明るい前編を聴いて読んで来たのになんか蹴落とされた気分ですわあ

ですが内容と切ない曲調がマッチングしてて自分はすきです。
*2012/10/27(土)21:30

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